こいつは古いぞ!


 兄、龍介の楽器。兄が、この、米国ギブソン:Gibson 社製のファイアーバードと言うギターに注目し、購入を目論む70年代前半、存在自体が、知られていなかったし、楽器屋で目にする事も、中々出来なかった。エレキブーム、GS(グループサウンズ…)ブームなどと言う流行があり、学生街、御茶ノ水界隈が、一大楽器屋街となり、いまだにギターと言う物を、量産、販売しているので、僕の知る限りでも、40年以上、一体、何億本(…いや、冗談でも誇張でもなく…)のギターが、世の中に売られていったことか。
 そして、70年代も半ば、「どうも、ギブソンフェンダーも、古いのがいいらしい」と言う、噂が流布されたんだな。 他にも山ほど胡散臭い情報があった。弦は太いのが良い、楽器の総重量は重いのが良い、ボディとネックは隙間があっちゃいけない、ピックアップのカバーは外した方が音が良い…云々。今となっては、古いのが良い、という話以外、根拠と思えるものが無い。
 多くのギターキッズがレスポールストラトキャスター、SG、テレキャスターなどに憧れ、夢見る中、Steve WinwoodJohnny Winterの影響か、兄は、このファイアーバード(検索用ワード:Fire bird ファイヤーバード)と言う、自動車デザイナーの手による、世にも斬新な、そして考え抜かれた機能と音質を持ち、かっこ良く、…まあ、座るとあんまり弾きやすくは無いギターに入れ込み、70年代初めに、グレコでオーダーシステムが始まるや否や、本物の資料も覚束無いまま、1本のフぁia〜ばーdoもどきを、手にするのだった。これは、ドラマーとして演奏家のキャリアを始め、ギターリストに転向してまもなく、今現在と大して変わらない異常な奏法を身につけた兄の、慧眼であったと僕は信じて疑わない。
 さて、この楽器を、お茶の水石橋楽器で購入する前、同楽器店でもう一本のファイアーバード(黒とブラウンのサンバーストの間に赤みがあったろうか…)も購入していたが、その値段が30万円。これが、35万円で売りに出てたから、以前の楽器を返してあと5万円頂戴…と、茨城だか栃木だかのなまりの強い、当時の店長(ちょっと二谷英明似…)は、大雑把な交渉を持ちかけるのだった(時代だね…)。その後、この楽器は兄の英国行きにお供し、ピックアップの交換(オリジナルPUは、小型の為、収納穴の拡大を断行)、ヘッドの一部を切断しての糸巻き(ペグ)の交換など、集めるだけの収集家が聞いたら卒倒しかねないような、実践的な改造を施されながら、現在も兄の良き伴侶として寄り添っているはずである。そして、近々、兄の浮気編も、乞うご期待!のはずだっ!
 注:後ろに写ってる大きな棺おけ状の物はこの楽器のケース…と思われる。まあ、以上、僕の記憶に間違いがあれば、兄からうっすらとクレームが来るはず。