太い音・・・

 なんとも漠然とした言い方。音楽的な表現、好みによるところ大な・・・、その物でもあろう、音色の特色なのだが、我々兄弟の耳に、身体に、心地よい響きと言うのが、明確に有って、なおかつ、その他の音色は性に合わ無いと言う、実に厄介な事実がある。
 大道具施工会社の、廃棄場で拾った、何も部品のついていない一本の国産レスポールタイプのギターで、僕はそれに気付いた。
 特に気になる打ち傷や、主要部品のねじれや反り、ゆがみも無くて、足りない部品をつけ、弦を張り、ピックアップさえセットしてやれば、エレキギターとしての機能を、持ち直すのではないか?という考えが浮かび、許可を受け、持ち帰った。
 組み立ての知識の無い僕が、出来た事は、昔持っていた楽器から取り外した、ギターマイクを、アンプに繋ぐケーブルの片方を切り、配線を露出し、+だか-だかをマイクから出ている線と当てずっぽうに結線し、直接アンプに入力する事だけだった。前日の日記に写真を載せ、エレキギターの最初の印象であった、「色んな音が出ちゃうっ!」と言うのとは、全く逆の方向、音量も、トーンも調節機能の無い、ただ音の出るエレキギター

 しかし音は、・・・物凄かった。

 出したかった音は、これだ!…ったのだ。楽器用のアンプは、幾つか有ったので、ある程度、防音加工を施してある、野中の一軒家である我が家の自室で、ずいぶんと長い時間を飽かず費やし、もう、足立兄弟やAUSIAでは、あまり弾く事の無くなった、かつてのエレキギターと、音を比べた。
 楽器自体の値段も、古い米国製ギター、それに付けていたピックアップも、ひとつ約十万円もするようなものと比べて、拾い物の、部品を寄せ集め、でっち上げたギターが遜色なく鳴るどころではなく、圧倒的な音圧を奏でるのである。
 そして、ヴォリューム用のポッド、トーン用のポッドと各種調整機能を付加し、もう一つピックアップを足して…どんどん音色が、か細く、魅力のないものになっていってしまったのである。続く…はず。