Every move he makes is.......oooooh!

 観ておきたかったマイケルジャクソンの This is it 。ただただ素晴らしく、目を離せない何度もの瞬間が、震えに変わっていった。ビリージーンには、とても惹かれていたのだが、その後、スリラー、バッド、ウィーアーザワールド、と続き、心が、随分と遠くに離れていった。しかし、今日見たこの映像は、一生に何度も無いほどの感動を持って、身体に焼きついてしまった。
一番、認識とかけ離れていたのは、彼のダンス、歌唱の醍醐味が、即興に有った事だった。恐ろしいほどに優秀なミュージシャン、バックダンサー、映像作家、舞台美術等のスタッフに支えられては居るものの、全ての曲の細部、イントロや考え抜かれたハーモニー、ブレイクまでをも、熟知し、神がかったひらめきと卓抜のアイデアを加味して行く。舞台監督にキューなど出させず、鍵盤奏者が瞬時に加える完璧なヴォイシングに、「音が多すぎる」と、シンプルな音併せののコードを要求する。ビートの要求は、「眠りから覚めたように…」「僕のタイミングでブレイクをゆっくりと。ここで上着のボタンなんか、留め直したりして…That's it !」 何でも数えたがる欧米の演奏家に彼が要求するのは、「間」そのものではないか!

 コーラスや他のダンサーは誇りと憧れ、畏敬とを同時に抱きながら、リハーサルの瞬間々々を、一生涯忘れない記憶としてとどめようとしながらも、夢心地のような目つきをしながら、緊張し、尚、この上なく感動し、そして、心の底から楽しんでいる。

 人間は、長生きも大事なのかもしれないが、ジミヘンドリックス、ジムモリソン、ジョンレノンなど、普通の人間が、何百年使っても、成しえない事を、たった20〜30年でし終えて、この世を去ってしまう事がある事も、事実として示している。

 マイケルジャクソンも、そう言った一人であった事を、亡くなった後で思い知った。どうか、この作品を、この文章に縁のあった人の、出来るだけ多くに観て貰いたい。人間の創り得た、最も美しい作品の一つであると、僕は思う。