mon oncle

 モノンクル(仏語で僕のおじさん)と言う、30年も前の雑誌を、ネットで見つけて買った。

 伊丹十三氏責任編集、確か、隔月刊で、ポパイ、ブルータスと同サイズ、精神分析、心理学の領域の事柄を、噛み砕いた文章、相談者と複数の分析者とによる、インタヴュー、座談会、南伸坊氏等の独特、且つ的を射たイラストで、たのしく(相談者には申し訳ないが)進行する、興味尽きない内容だった。かつて、持っていた雑誌を一冊貸し、一冊進呈したりして、手元に無くなり、先日、その抜粋された内容の単行本「自分たちよ」を、図書館で見つけ、その内容の興味深さに、改めて惹かれたのである。

 6冊10000円(送料込み)。当時の値段一冊490円であって、僕には贅沢な感じの買い物だったが、その内容は、痺れるほど面白く、当時、20代の僕には、理解し得なかった多くの事柄が、今になって、眼前に迫るほどの現実感とともに、突きつけられるよう。

 読み進む内、伊丹十三氏、創刊号ゲスト、YMO当時の、坂本龍一氏等、汲めど尽きない知識、と教養を携えた面々は、揃って、今の自分より、大分年若であることに気づく。無論、彼らの洞察力、見識が30年の時間を経過し、自分より若年のあまりに、深みを減じているわけでは、けしてない。でも、対話の中で、何処まで自分のサイドに相手を引き寄せれば、相手が怒るかな、と言った若気の至り的な実験的発言も散見されて、面白いやら、年取った自分に呆れるやら、なのである。思えば、若い自分を叱ってくれたり、教示、指俊を与えてくれた人達は、最早亡く、存命であれば、かなりの高齢である事多く、いわんや、54で亡くなった母('12年現在、同い年…)などとは、同じ年代の目線を持ち得たと気づく事、しばしばである。

 日本人と欧米人の発想の違い、英語と日本語の用法、成り立ちの違い、意思の疎通の上で、首をひねらされてきた多くの疑問や食い違いを理路整然、氷解に導いてくれるコラムもあり、当時不可解とされた事件の数々(例えばパリ人肉食事件等)も、掘り下げ、究明を試みる。今、読んでも頷かされるどころか、僕は、一生涯、この本から学べる事を山ほど得たと感じ、不相応な出費を取るに足らないものと、納得できたのである。    超お薦めだ。