カネタタキ

 蝉や地虫の、いささかヒステリックな鳴声が、秋の虫の声に鳴き代わる頃、涼風を携えて、家の二階にある寝床に聴こえて来るのは、かねたたき。

 チンチンチンチンチン・・・と、小さい音ながら、明瞭に清冽さを持って響き、まるですぐそばで鳴いてるような錯覚を覚える。

 一匹の持つ、テリトリーが広いのか、仲間の数が少ないのか、鳴き合わされることなく、鉦の音はいつも一つづつしか聞こえない。そして、その鉦の音を楽しみながら、秋を感じ、眠りにつける。

 ワンノート、ハーモニーも無い、小さな音。普段、ああでもない、こうでもないと、楽器を持ち替え、楽曲をひねくりまわす、自分の演奏をいさめられているような気がする。

 ・・・良い音!