重習秘曲. 2!・・・



 僕は、重習秘曲(おもならえのひきょく).かさかさを、イントロから、うんと最後の方まで、ギターの6弦をDに下げ、ドローンの効果を得ながら、演奏している。しかし、曲の最終部分は、それを通常のEに、できれば戻したいのだ。

 なぜかと言えば、その部分でDの音は必要なく、邪魔でさえあり、コードを抑えながら、6弦の発音を消すか、指で、他のフレットと一緒に問題の無い部分を押えなければならないから…という、判ったような判らないような事情があるからなのだ。

 それならば、最後だけ楽器を持ち変える? 黒子を頼み、その部分だけ、6弦の2フレットを後ろから押えてもらう? ギターそのものを改造する? 一弦のみ押えられる器具を作る?

 みんなやってみた。でもだめ。もう十年以上、その事を考えている。

 そうして、今回、ダブルネックのギターで、両方のチューニングを獲得しつつ演奏を行う、という、野蛮だが確実な、失う物の少なそうな方向を考え、お茶の水は楽器屋街に物色を試みた。

 弾きなれた、ガットギターのダブルネックなどは勿論、スティール弦のエレアコすら、そんな需要そのものが無いらしく、足を棒にして歩いても見つからず、ある一軒で、チューニングの上げ下げを、6弦だけでも瞬時に、しかし確実に行う方法はありませんかと聞いてみた。「ベースの糸巻きでそんなのが有った気がします」と、ネットで調べてくれたのが、シャーラーというドイツ老舗弦巻き会社の物。「そんなの…あるんですか…」と、光明が見え始めた探索行の労力も、震えんばかりに喜びに代わりつつあった。

 「つい最近、ギター用も発売されたようです」 「…!!!…???(ベース用が先で、ギター用は最近? 変だ…)」容易に世の中を信じられなくなっていたその時の僕は、なおも警戒を強め、「EからDに落とす事ができるらしいのは判りました。その逆はどうですか?瞬時に行えますか?」 「いや、実物さえみた事無いので何とも…」  おびえる、親切極まりない従業員に、その器具の値段だけ聞くと、逃げるようにギターパーツ屋に走った。そして、その店員は、米国製の、類似の物なら有りますというのだ。「現物が…、あるんですかああぁっ?」過剰な反応に怪訝な表情の店員は、先ほど聞いたシャーラー製のものより2千円安い値段を示しながら、商品を見せてくれた。「EからDに落とす事ができるらしいのは判ったんですが、その逆は容易に出来ますか?」剣幕に押されるように、「さあ、出来るはずですけど…」 「判りました。後は調べて出直します!」…ここまでくれば、こっちのもんである。使い勝手などを調べれば、何件かは、コメントも得られるであろう。そしてためしにHip shotという会社名で検索を入れると、ネットオークション恐るべし!更に2千円安く、送料を入れても一万円ほどで、出品があったのである。これを即落札し、今朝早く我が家に届いた、それを、慎重に楽器に取り付け、ついさっきまで楽器を傍らに置くことなく、ためつすがめつ、弾きたおす一日となってしまった。その効果の程は3/26音や金時(1枚目の写真は、その演奏会フライヤーの草案である…)でご確認あれ!